2012年5月30日水曜日

腰下肢痛


腰下肢痛

■脊柱管が関係

椎間板ヘルニアは若年者に多く、ペインクリニックには急性発症で受診することが多い。椎体や椎弓、椎間関節の変性は脊柱管狭窄を生じる。これは高齢者における腰痛の大部分の原因である。椎間板の変性、椎体の変性は外力、加齢、肥満、筋力低下が原因となって生じる。また、椎間板の変性は不安定椎を生じ、腰痛の原因となる。

良性腫瘍としては神経症鞘腫や髄膜腫で手術療法を希望しない場合や、術後も痛みを訴える患者も神経ブロック療法の対象となる。

原因不明とされていた腰痛が悪性腫瘍の転移が原因のこともしばしばある。安静時痛が強い場合、夜間痛があり不眠がある、仰臥できない、体動時痛のある患者では悪性腫瘍の脊椎転移を考えるべきである。

 筋筋膜性腰痛症は腰痛の原因として多いものであると考えられているが、脊柱管の障害からの二次的なものが多いと思われる。

化膿性椎間板炎、硬膜外膿瘍はまれである。医原性が多いが、時に原因不明の硬膜外膿瘍も見られる。


痛みはまっすぐにへそから始まる

手術で腰痛のみが残り術後年余を経てペインクリニックを訪れる患者が多い。術後痛は神経因性疼痛となっていることが多く、各種の治療法を組み合わせて治療を行う必要がある。

■転換性(心が関係)

身体表現性障害ともいわれる。心理的問題、人格的問題から身体症状を表す障害である。その中で腰痛を主訴とするものが少ない。画像診断で脊柱管にたとえ変性性の変化があっても、それは単に加齢現象であり痛みの原因とはならないことも多い。転換性の腰痛症患者ではそのような加齢現象が原因であるとみなされて、手術されることも少なくない。術後も痛みが変化しないまたは増悪する例はそのような症例が多い。術前の心理的は評価が必要である。このような患者では神経ブロック療法も依存的になる傾向があり、操作的な患者では特に注意が必要である。

■内臓が関係 

骨盤内臓器の疾患、後腹膜腫瘍ではしばしば激しい腰痛を生じる。代表的のものとしては膵癌の後腹膜転移がある。そのような症例では腹腔神経叢ブロックが著効する。


骨移植を伴う痛み

   血管が関係

バージャー病や慢性閉塞性動脈硬化症は激しい腰痛や下肢痛を生じる。腰部交感神経節ブロックが著効する

■体動との関係

運動時痛は脊椎性の腰痛にみられる。安静時痛は内臓痛や癌性疼痛に特徴的である。間欠跛行は脊柱管狭窄の診断に重要な徴候であるが、血管性の間歇跛行との鑑別が重要である。脊柱管狭窄による間歇跛行は腰部を前屈して休むと再び歩行可能となるが、血管性のものは単に立ち止まるだけで再び歩行が可能となる。

夜間痛 

夜間痛は急性腰痛症や癌性疼痛に特徴的である。夜間痛がありしかも臥床が困難であれば悪性腫瘍の脊椎転移を強く疑う。

腰痛の既往

慢性腰痛では急性腰痛のエピソードの繰り返しがある。急性腰痛を繰り返すことで次第に椎間板の変性が進行し慢性の腰痛へと移行する。


しびれ、右側の首の痛み

■就業

仕事をしているかどうかは治療上重要である。長期に就業していない患者では心の問題が大きく関係する。労災や交通事故での腰痛は賠償が関係するので、訴えが心理的要因を受けることもある。

急性腰痛の治療

外来での硬膜外ブロックが先ず行われる。急性期は連日または隔日に5回程度行う。それで十分な効果が得られない場合は次の治療を併用するかまたは入院での治療を考慮する。抗凝固薬を服用し出血傾向がある患者では、硬膜外血腫の危険性があるので大腰筋筋構ブロックを選択する。

硬膜外ブロックで十分な改善が無く、腰痛が主訴の患者ではレントゲン透視下に椎間関節ブロック,椎間関節高周波熱凝固術を行う。また下肢痛が強い患者では罹患分節の神経根ブロックをレントゲン透視下に行う。さらに症状が改善せず、MR,CTで椎間板ヘルニアを疑われる症例では経皮的椎間板摘出術の適応を判断するため椎間板造影を行う2-4)

 

慢性腰痛の治療

慢性腰痛は術後、または高齢者の症例で多い。週1回程度の硬膜外ブロックを外来で行う。外側型脊柱管狭窄では、神経根ブロックを1ヶ月に1−2回行う。圧迫骨折などで腰痛が主訴の症例では椎間関節ブロックや椎間関節高周波熱凝固術を行うと有効なことが多い。


術後性の腰痛では局麻薬のブロックでは効果が持続しないことが多く椎間関節高周波熱凝固術、神経根高周波熱凝固術を症状改善に有効である。

脊柱管狭窄で間歇跛行がある症例では交感神経節アルコールブロックまたは高周波熱凝固術で跛行距離の延長が見られることが多い

 

治療方針の決定

画像診断はまず腰椎単純撮影をおこなう。下肢痛では股関節の撮影、膝関節の撮影もときに必要である。

腰椎の軟部組織の診断にはMRIがもっとも有効である。後縦靭帯骨化症や,横靭帯骨化症の診断にはCTが有効である。特にヘリカルCTでの3次元再構築は障害部位を立体的に把握するのに有利である。

臨床症状と画像診断が一致すれば、治療方針が容易に決定できる。しかし画像診断のみでは決して治療方針を判断してはならない。痛みはあくまで機能的なものである。しばしば画像診断とは一致しない。

 

 

  

第4腰椎と第5腰椎の間の椎間板が後方に飛び出し、神経を圧迫している、腰部椎間板ヘルニア

 

椎間板ヘルニア

   写真1



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